天下無賊 大連よりイノセントワールド24話/全28話

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2005年正月に上映された中国の映画、名作「天下無賊」

<キャスト>
*主人公愚根、子供のように純真なままの男。
*泥棒カップルの女、王麗、台湾女優(リュウ ルゥイン)妖艶な色気が魅力。
*泥棒カップルの男、王薄、香港のスーパースター(アンディロウ)イケメン男優。
*窃盗団の親分、中国男優 葛優(グウヨウ)中国のおっさん、落ち着いた低音の声が印象的。
*泥棒カップルを追う顔に刀傷のある謎の男。



「天下無賊 24話~イノセントワールド」自由訳



大海から、一本の針を探すような苦労を重ねながら、彼はじりじりと2人を追い詰めていた。砂漠のはずれの小さな駅で、彼らに出くわしたとき、彼の心臓は、飛び出さんばかりに驚いた。彼は、ついに彼らを見つけたのだ。


王薄と王麗の似顔絵は、3年前のあのホテルでゆすられた、あのエロ部長から聞き込んだものだった。元はといえば、砂漠で愚根に出会ったことが、泥棒カップルとのめぐり合わせになったのだ。


彼は、この愚根をこそ泥から、守ってやろうと思ったことで、まさか、この2組の泥棒に出会うとは、思いもかけなかったことなのだ。しかし、彼ら2人の行動には、解せないものがあった。明らかに彼らは、この間抜けな愚根を守っている。


刀傷の男は、もとより、情に流されないことと、勇猛果敢さで知られていたが、今回ばかりは、すぐに逮捕すべきかためらった。彼は2人組みの逮捕を、何度も引き延ばしたが、彼自身も、どうして逮捕をしないのか分からないでいた。


彼の腰にある手錠は、握られて汗ばんでいたが、いまだに使かおうとしなかった。彼は自分に話しかけていた。


「もう少し待ってみよう」


「これは面白い話じゃないか」


「泥棒カップルが、間抜けな若者を、泥棒から守っている。」


しかし、彼は別のことも考えていた。


「心を乱しちゃだめだぞ」


「これは芝居なんだ」


「お前は、どれだけ辛い思いをして、3年間もの間やつらを追いかけたんだ」


「ついに見つけたんだぞ」


「やつらを逃がしちゃだめだぞ」


「やつらは、何時だって逃げる機会があるんだぞ。」しかし、また自分に問いただした。


「お前は本当に、」


「あいつらが、3年もの間追いかけた大泥棒なのか」


「世の中には、似たような顔はいくらでもいるんだぞ」


「もうすこし待ってみろ。」彼は、様々な理由をつけて、逮捕の先延ばしの理由を、自分に納得させようとしていた。


実は、彼の心は決まっていた。本当は、彼ら2人に対する同情が生まれていたのだ。彼は、この泥棒カップルが残念でならなかった。彼らは泥棒ではあったが、今まさに、一つの善行をしようとしている。


これは不可解なことであったが、不思議な夢のあるはなしでもあった。刀傷の刑事は、彼らに、今やろうとしている善行を、全うさせてやりたいと思った。そして、彼らがやった善行は、判決で有利になるはずだ。


彼は、自分がやろうとしている行為は規律違反でもあり、自分にとって危険な行動だとは知っていた。しかし、手錠をすぐには出すことが出来なかった。


25話に続く