天下無賊 大連より14話~イノセントワールド

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2005年正月に上映された中国の映画、名作「天下無賊」

<キャスト>
*主人公愚根、子供のように純真なままの男。
*泥棒カップルの女、王麗、台湾女優(リュウ ルゥイン)妖艶な色気が魅力。
*泥棒カップルの男、王薄、香港のスーパースター(アンディロウ)イケメン男優。
*窃盗団の親分、中国男優 葛優(グウヨウ)中国のおっさん、落ち着いた低音の声が印象的。
*泥棒カップルを追う謎の男。


「天下無賊 14話~イノセントワールド」自由訳


そんな彼らが愚根と出会ったのは、めぐり合わせだった。2人はそんな愚根にあっけにとられていた。


砂漠からやって来た、この間抜けな若者は、なんと、彼らの前で、「この世に泥棒なんかいない」と頑なに言ったのだ。


それは、あの砂漠で受けた頑なさと同じ衝撃だ。その時、王麗は胸を打たれた。彼女は王薄の袖を引っ張って言った。


「あの子、まるで私の弟にそっくりだわ、馬鹿な子」


王麗は時々弟に仕送りをしている、しかし、弟は姉が泥棒だとは知らない。


王薄は振り返って彼女を見た。彼女は、不思議そうな目をしていたが、何も言いはしなかった。


愚根の乗った列車は鈍行だ、1、2時間に1度駅に止まる、そのたびごとに大勢の乗客が乗り込んでくる。座席はとっくに埋まり、かなりの人が通路で押し合いへし合いして、大小の竹かごや、天秤棒や、荷物が乱雑に置かれている。


薄暗い電灯の下には、熱い空気が充満していて、時折、誰かが言い争う声が聞こえてくる。見ると足の悪そうな老人が、通路をうろうろしている。


この老人は座る場所が見つからず、周囲に悪態をついていた。


愚根は、老人を見ると、すぐに立ち上がり、老人に席を譲ろうとたちあがったが、その時、隣の席の王麗が、愚根の腕をひっぱり、「ほっときなさい!」と言った。


そういわれて愚根はおとなしく、又、席についた。愚根には、王麗の言う意味が分からない。


この女は俺の何なんだ、怪訝そうに王麗を見た。


そしてわけの分からないまま席にすわって、相変わらず、また、あたりをキョロキョロ見ている。


見ると王麗は、通路を掻き分けて、あの老人になにやら話しかけている。老人は驚いたように、慌てて別の車両に移っていった。


愚根は、戻って来た王麗に、今のことを聞きたかったが話しだせない、胸の中に、もやもやとしたものが残った。

愚根は、ずっと興奮状態だった。列車が止まるたびに、窓を開けて外をみた。黒く、ごみごみとした村や町が、どんどん増えてくる、砂漠の中から、人間の住める世界に戻って来た懐かしさが込み上げてきた。


小さな駅の、まばらな薄暗い電灯のあかり、野菜かごを持って、車窓の近くで何かを売っている女、全てがこの上なく新鮮に感じられた。


愚根は、何年もあの大砂漠の中で仕事をしていた、すべてが隔世の感がある。愚根は、会う一人一人に笑いかけたくなる。


一人一人に、「俺は6万元稼いだんだぞ」


「帰ったら家を建てて、嫁をもらうんだ」と言わずにはいられない気持ちになる。


愚根の心は中は、幸福感に包まれている。全ての人とこの幸せを分かち合いたい気がした。


15話に続く