天下無賊 大連より六話~イノセントワールド

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2005年中国で上映された正月映画「天下無賊」

<キャスト>
*泥棒カップルの女、王麗、台湾女優(リュウ ルゥイン)大人の色気が魅力的。
*泥棒カップルの男、王薄、香港のスーパースター(アンディロウ)イケメンの男優。
*窃盗団の親分、中国男優 葛優(グウヨウ)は中国のおっさん低音の声の響きがいい。
*愚根、純白な若い青年。
*泥棒カップルを追う刑事。


「天下無賊 六話~イノセントワールド」原文訳


副村長は、工事現場の人足の男に、愚根を、300キロはなれた小さな駅まで送らせた。


愚根はそれにも腹を立てて、送ってくれた人足を、相手にもしなかった。


「6万元の金といっても、レンガ一つほどの重さじゃないか」

「俺が持って帰れないとでも思っているのか」愚根は心の中で思った。


トラックの荷台から外を見ると、7、8匹のオオカミが、トラックを追ってくる。


愚根が住んでいた資材置き場に棲んでいたオオカミたちが、愚根を追って来たのだ。狼たちは、10数キロほど愚根を追ってきた、愚根は立ち上がり、狼たちに向って大きな声で、一言二言いうと、とうとう狼たちは立ち止まり、大きな砂山の上から、頭を高く上げ吠えていた、やがてその姿も見えなくなった。


愚根はお金の入った布袋を、首から提げていたが、その布袋の中には、お金のほか、何枚かの着替えや湯のみコップ等を、一杯入れているので、パンパンに膨れている。いかにもお金が入っている様に見える。


トラックの荷台に一緒に乗っている6、7人は、愚根をずっと見ていた。送ってきてくれた人足は緊張して、愚根の耳元で、「気をつけろ」と小声で言った。


しかし、愚根はその言葉を、聞かないふりをして、周囲の人に笑顔を見せて、全く困ったものだと、言わんばかりの顔をしている。


それを見ていた人たちも笑ったが、だれも何も言わない。


ただ一人だけ、痩せた若い男が、トラックの揺れにつられ、居眠りをしている。人足は、この男が一番怪しいと感じていた。


愚根がお金を下ろしに行ったとき、町の沢山の人は、愚根が大金を持っているのを見ている。だから、誰かが愚根の後をつけていることはありえる。


人足は肘で愚根をつつき、その痩せた若い男をあごで指した。


愚根は、その男を見たが、何時の間にか、眠りについてしまった。人足は、愚根の護衛のため眠ることも出来ず、手で顔をつねってみたりしていたが、ついに全員が、こっくりこっくりと眠りはじめた。


すると、さっきまで居眠りしていた、その若い痩せた男が目を覚まし、荷台の隅に座って、タバコをすいながら、トラックの外の、どこまでも続く砂漠を、じっと眺めている。


トラックは、朝早く出発したが、太陽が西に傾く頃になっても、未だ砂漠を出そうも無い。


その若い痩せた男は、顔に、少なくとも3つの刀傷がある。この男が、愚根を狙っているに間違いないとだれもが思った。


七話へ続く