列車は明け方駅に着く 大連より十二話

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(第十二話)自分自身の存在価値を求めて、


ミンミン(モノローグ)
父さんは涙を流していた、いいえ、涙を流していたのは父さんの心だ。帰り道で、二人とも何も言わずに、黙りこくって歩いていた。
でも、お互いの胸には、言いたいことが一杯詰まっていたのだ。


父(モノローグ)
娘よ、お前はつまずいた、いや、つまずいたのは、私だ。
まるで、山頂を目前にして、あっと言う間に、情け容赦なく谷底に突き落とされた登山家のように。


ミンミン(モノローグ)
父さん、私は「父さん許して!」と大声で叫びたい! 父さんの愛情を私は、心からありがたいと思っている。
・・・・いつまでも・・・・いつまでも・・・・。


父(モノローグ)
ああ、お前の母さんは、あまりにも早くこの世を去ってしまった、
それからの歳月、お前を育ててきたが、それは大変な苦労だった。
だが、これからお前が、そのか弱い心で、独り立ちして、生活の重さに耐えて行く事を考えると、私の苦労など取るに足らない。
娘よ、お前は、間近に迫った自分の将来を考えて見たことがあるのか。


ミンミン(モノローグ)
ピアノは上手に弾けなかったけれども、それでも、父さんにとって、慰めになることがあるわ。
私はピアノを弾くなかで、人生について考えるようになった。
誰もが成功するとは限らない、しかし、みんな、独り立ちして自分の生活の道を歩まなくてはならない事を、
自分自身の存在価値を探し求めなくてはならないことを悟ったの。


父(モノローグ)
ああ、私は、もう年だ。本当に歳をとったよ、日増しに増えていくこの白髪が、お前に見えないのが残念だ。
だが、お前はまだ若い、生活の道は、お前が自分の手で選ばなくてはならない。
娘よ、私は、どんなに老いさらばえても、父さんは希望を持って、お前をずっと見守っている。
・・・いつまでも・・・・いつまでも・・・・・。

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