列車は明け方駅に着く 大連より十話

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(第十話)志ある者は、必ず成功する。


父(モノローグ)
ピアノを独学でマスターするのは、困難だ。
射撃チームのコーチの私は、ピアノは全くの素人だ。

そこで、レッスンの先生をお願いすることにした。毎週火曜日と土曜日の夜、私と娘は一緒に先生の所へ行ってレッスンを受けた。

私は娘を助けてノートをとり、資料を録音した。
私は娘に代わって、演奏についての、細かい注意事項をメモした、そして、家に帰ってから、繰返し娘に噛み砕いて教えた。

私は、盲学校に通って点字を覚え、名曲の楽譜を幾つか、ミンミンのために点訳した。

私は娘に言った。「志ある者は必ず成功する」

こんなことも言った、「視力を失った盲人にとって、美しい旋律は、清らかな小川のせせらぎ、露に濡れた花、思う存分遊び戯れる小鳥のようなものだ、芸術の殿堂に通じる道は、まず、第一歩から始めなくてはならない。」

私は娘のために、心を込めて一枚の青写真を作り上げた。ところが、ある日突然ピアノの音がパッタリ止まった。・・・・・・・



「ミンミン、どうして弾かないんだ。疲れたのかい、それとも、気分が悪いのかい?
・・・・さあ、頑張るんだ、歯を食いしばって続けるんだ、さぁ、もう一度弾いてごらん。」

「もう、たくさんだわ! 弾き飽きたわ。・・・・」

「ナンだって? お前、弾き飽きたって? 途中でやめるのか。」

「毎日、部屋に閉じこもって、弾いて、弾いて、弾いてばかりで、もううんざり!」

「何てこと言うんだ。言うことを聞いて弾きなさい。」

「嫌! もう、絶対弾かない! 私、ピアノなんか大嫌い。」

(ピアノを叩きつける音・・・)

「何をするんだ、止めなさい、」

「嫌、こんな、ピアノなんか、大嫌い、壊れちゃえばいいのよ。」

「お前は、なんて駄目な人間なんだ!・・・・・・ 」

「・・・・何を泣くんだ、どの面さげて泣けるんだ。このピアノを買うために、家の中はスッカラカンになった。
先生にレッスンをお願いするために、食べ物も切り詰めた、私はもう、何ヶ月も肉を食べていないんだぞ。
お前を一日も早く一人前にするために、父さんは一晩中眠れない日が続いているんだ。
お前、分かっているのか。

・・・・父さんは、だんだん年をとる。父さんが死んだらお前はどうなるんだ? 目が見えないのに、何も勉強しようとしない。
それでは、父さんは死んでも死に切れない・・・・・・

「父さん!・・・・」

「ミンミン!・・・・」

(第十一話に続く)