列車は明け方駅に着く 大連より八話
(第八話)傷口がひどく疼いた。
ミンミン(モノローグ)
(泥の中で転んだ私は、力を振り絞ってもがき、立ち上がったが、傷口がひどく疼いた。
頭も、手も、膝も、べとべとする、しかも、粘々している。
きっと、雨と血が混ぜ合わさって流れているのだろう。
私は歯を食いしばって泣かなかった。
心の中で、父さん、父さんと叫び続けながら、家の方へと、転びそうになりながらも、懸命に歩いた。)
(・・・・家の玄関にて、)
「あれ、父さん家にいる。病気じゃない、それに、よそのおばさんもいる。」
「あぁー。ミンミン!なんでずぶ濡れなんだ、あれ? 血が出ているじゃないか。」
「転んだの。」
「ナンだって? さぁ、早く入りなさい。」
「父さん、どうして迎えに来てくれなかったの?」
「大変だ、今何時だ?」
父の再婚相手イーリン「4時半ですけど。」
「ナンだって? もう4時半なのか。3時になったばかりだと思っていた。」
「娘さんの出迎えがあるとは、知らなかったものですから。そうでなければ・・・・」
「いや・・いや・・私のせいだ・・私のせいだ・・ミンミン、父さんが悪かった。早くこっちにきて、濡れた服を着替えなさい。さあ、父さんが傷口をきれいに洗ってあげよう。」
「ミンちゃん、さぁ、着替えを手伝いましょう。」
「私に触らないで! あっちへ行って。」
「ミンミン、なんだ、その口の利き方は。」
「みんな、その人のせいよ。」
「そのおばさんは、いつか話したことのある、テレビ局のおばさんだよ。」
「その人、何の用があって家へ来たの?」
「それは大人の話だ、後でゆっくり話す、さあ、早く自分の部屋に行って着替えるんだ。」
「礼儀をわきまえない子で、本当に申し訳ない。」
「いいえ、そんな事、私にはよく分かりますわ。娘さんはあなたが必要なのです。」
「将来、娘の面倒を見てくれる人が、一人加わると助かるのですが。」
「私も、それを望んでいます。けれど、物事はそんなに上手くはいきません。もう、帰った方がいいようですね。」
「ちょっと、待ってください。あなたに話したいことがあります。」
(部屋でミンミンの泣き声・・・・、)
「あ~、あの子ときたら・・・・」
「早く見に行ってあげてください。」
「そうしよう、後でゆっくり、今晩9時、いつもの公園の入り口で会いましょう。いいですか?」
「だめ。」
「私を、必ず待っていてください。娘は、私が、きっと説得します。」
「あなたは、娘さんの気持ちが分かっていないのです。娘さんは、私があなたを奪うのではないかと、心配しているのです、 さようなら・・・、」
「イーリン、イーリン!・・・・・」
ミンミン(モノローグ)
(あの日、自分にも分からない、なぜ、あんなに、ヒステリックに泣きわめいたのか、もちろん、傷はすぐに治ったが、しかし、テレビ局のおばさんは、あれ以来、二度と来なくなった。
隣の人から聞いたのだが、父さんは急に年をとってしまった。
父さんは、朝、まだ夜が明けないうちに起きて、駕籠をさげておかずを買いに行き、私のために牛乳を取りに行く、それが、来る日も来る日も続く父さんの日課だった。)
(第九話に続く)
ミンミン(モノローグ)
(泥の中で転んだ私は、力を振り絞ってもがき、立ち上がったが、傷口がひどく疼いた。
頭も、手も、膝も、べとべとする、しかも、粘々している。
きっと、雨と血が混ぜ合わさって流れているのだろう。
私は歯を食いしばって泣かなかった。
心の中で、父さん、父さんと叫び続けながら、家の方へと、転びそうになりながらも、懸命に歩いた。)
(・・・・家の玄関にて、)
「あれ、父さん家にいる。病気じゃない、それに、よそのおばさんもいる。」
「あぁー。ミンミン!なんでずぶ濡れなんだ、あれ? 血が出ているじゃないか。」
「転んだの。」
「ナンだって? さぁ、早く入りなさい。」
「父さん、どうして迎えに来てくれなかったの?」
「大変だ、今何時だ?」
父の再婚相手イーリン「4時半ですけど。」
「ナンだって? もう4時半なのか。3時になったばかりだと思っていた。」
「娘さんの出迎えがあるとは、知らなかったものですから。そうでなければ・・・・」
「いや・・いや・・私のせいだ・・私のせいだ・・ミンミン、父さんが悪かった。早くこっちにきて、濡れた服を着替えなさい。さあ、父さんが傷口をきれいに洗ってあげよう。」
「ミンちゃん、さぁ、着替えを手伝いましょう。」
「私に触らないで! あっちへ行って。」
「ミンミン、なんだ、その口の利き方は。」
「みんな、その人のせいよ。」
「そのおばさんは、いつか話したことのある、テレビ局のおばさんだよ。」
「その人、何の用があって家へ来たの?」
「それは大人の話だ、後でゆっくり話す、さあ、早く自分の部屋に行って着替えるんだ。」
「礼儀をわきまえない子で、本当に申し訳ない。」
「いいえ、そんな事、私にはよく分かりますわ。娘さんはあなたが必要なのです。」
「将来、娘の面倒を見てくれる人が、一人加わると助かるのですが。」
「私も、それを望んでいます。けれど、物事はそんなに上手くはいきません。もう、帰った方がいいようですね。」
「ちょっと、待ってください。あなたに話したいことがあります。」
(部屋でミンミンの泣き声・・・・、)
「あ~、あの子ときたら・・・・」
「早く見に行ってあげてください。」
「そうしよう、後でゆっくり、今晩9時、いつもの公園の入り口で会いましょう。いいですか?」
「だめ。」
「私を、必ず待っていてください。娘は、私が、きっと説得します。」
「あなたは、娘さんの気持ちが分かっていないのです。娘さんは、私があなたを奪うのではないかと、心配しているのです、 さようなら・・・、」
「イーリン、イーリン!・・・・・」
ミンミン(モノローグ)
(あの日、自分にも分からない、なぜ、あんなに、ヒステリックに泣きわめいたのか、もちろん、傷はすぐに治ったが、しかし、テレビ局のおばさんは、あれ以来、二度と来なくなった。
隣の人から聞いたのだが、父さんは急に年をとってしまった。
父さんは、朝、まだ夜が明けないうちに起きて、駕籠をさげておかずを買いに行き、私のために牛乳を取りに行く、それが、来る日も来る日も続く父さんの日課だった。)
(第九話に続く)