列車は明け方駅に着く 大連より四話

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(第四話)今、どこの駅?


「父さん、今、どこの駅なの?」

「ああ、小さい駅だよ。浜海市には明け方着くだろう。お前はゆっくりお休み。」


ミンミン(モノローグ)
「・・お休み・・お休み・・・聞きなれた父さんの声は、20年間ずっと私のそばに付き添ってくれた。でも、今このとき、私はどうして眠れましょうか。

太陽が東の空に昇るとき、私は新しい生活が始まる。
何時も一緒だった父さんとの別れの時がやってくる。・・・・

母さんは早くに亡くなった。
父さんは、私の手を引いて、あの混沌とした生活から連れ出してくれた。

狭くて真っ暗な暗黒の世界から、私を連れ出してくれたのだ。

私の目は閉ざされて何も見えないけれど、やさしい月が、静かに車窓の外から、私に寄り添い、その清らかな光を、私の全身に、いっぱい降り注いでいるのを、はっきりと感じる。

・・・・列車は揺れながら進んでいく、突然私は、幼い頃、寝ていた揺りかごを思い出した。
・・・ゆっくり・・もっとゆっくり揺れておくれ。

父さんの歌ってくれた、慈愛のこもった子守唄を、もうしばらく聞かせておくれ。

その子守唄は、どんなにか、私の心を温めてくれたことか。
・・・それなのに、頑固で冷たく、怒りっぽい、わがままな私の性格は、何度となく父さんの心を傷つけた。

今でも思い出すたびに悔やまれてならない。

・・・それは、ある春の日、盲学校の先生に連れられて、みんなで植物園へピクニックに行った時のことだった・・・・・・・・

(第五話に続く)